AIによる食の技術革新

生成AI

未来の食事 

食の世界でかってない技術革新が始まった。

人工知能(AI)などで調理が大きく変わる可能性がある。

21世紀は食がメディアになる転換期となりそうだ。

AIが突破口

自動車や電気製品は、工場で機械によって生産されている。

だが、食べ物は全人類が毎日消費しているにも関わらず、

人間が家庭やレストランで手作りしており、加工食品を除くと、

大半は生産が自動化されていない。

これは何故なのか?

最大の理由は、食べ物はもともと生き物なので、形や大きさが

まちまちで、一律に扱いにくいからだ。

軟らかい食べ物をロボットで掴むのも難しい。

さらに料理の種類は非常に多く、多品種少量生産となるため、

コスト的にも見合わない。

こうした事情から、料理はテクノロジーの進歩から長く取り

残されてきた。

しかし、近年、状況は一変し、技術革新の波が急速に押し寄せて

いる。

突破口を開いたのは、AIを駆使した調理ロボットだ。

画像認識やセンサーの技術をAIと組み合わせ、小型ロボットが

アームを使って人と同じ調理作業を行えるようになった。

肉を切ったり、魚をさばいたりするのは無理だが、飲食店や

食品工場で利用が始まった。

この潮流は世界的に加速するとみている。

21世紀は、AIとデータ、ロボットによる食の大きな革新が起きる。

食料を作ったり、加工したりする産業の生産性は20年後に100倍に

向上するだろう。

もう一つの革新技術として「3Dフードプリンター」も注目されている。

様々な素材をコンピューター制御で立体的に成形する3Dプリンターを

食品に応用したものだ。

野菜や魚を粉末にして、水分などを混ぜた練り物を作り、押し出して

成形すると、味も形も本物そっくりの野菜や、寿司ネタなどを作れるのだ。

食べ物を大量に廃棄する時代を終わらせることは人類にとって急務だ。

乾燥した粉末の食材は長期保存できるので、食べたい時に必要な量だけ

使えば、食べ残しによる廃棄を減らせる可能性がある。

アレルギーや生活習慣病などの個人データを装置に入力し、健康維持に

役立つ味付けを行うこともできる。

コンピューターから人間に対して食べ物を出力するこれまでなかった

装置だ。

大きさは当初は電子レンジほどだが、2050年には弁当箱ほどに小型化

するであろう。

調理から解放

調理ロボットや3Dフードプリンターは、当面は業務用だが、20年後には

家庭での利用が見込まれている。

料理は家事労働の中で最も自動化が遅れており、普及すれば主婦らの負担

軽減に大きく貢献しそうだ。

ただ、実現へのハードルは非常に高い。

家庭で毎日、同じ料理を食べるわけにはいかないので、いろいろな食事を

臨機応変に作れないと役に立たない

原料となる多様な食材をどう調理するかも課題になる。

電気代を含め、安価で場所を取らないことも重要だ。

こうした問題を解決すると、未来の食卓はどうなるのか?

楽観的に言えば、AIで学習したロボットに調理を任せ、好きな

食べ物を食べたい時に味わえるようになる。

ロボットが作った料理を自動運転車で宅配するサービスも始まり、

家庭の台所は縮小していく。

確実に言えるのは、人は自分で料理を作らなくなっていくということだ。

人類は産業革命以降、多くの作業を次々と自動化してきた。

料理を作らなくなるのは必然だ。

食べ物に割く時間が減ると、人類は使える時間が増えて、より多くの

ことを考えるようになり、技術や科学、文化が発展して、より豊かに

なっていくと展望する。

料理の価値観も変わる。

手料理は存在感を失う一方、趣味や心の癒しを求める特別なものに

なるはずだ。

自動車の登場で人はあまり歩かなくなったが、気分転換や観光での

散歩は楽しんでいる

料理も同じような存在になっていくのであろう。

食行動をつかさどる味覚の分野でも、新たなテクノロジーが

実用化する。

イタリアのボルタが約200年前に電池を発明するきっかけと

なった「電気味覚」という現象を応用したスプーンが、年内に

発売される予定である。

スープなどを載せて口に含むと、微弱な電気が流れる。

これを内蔵する機器で制御することによって、食品中の塩分で

あるナトリウムイオンが、味を感じる舌の細胞に一気に引き

寄せられ、塩味が強くなる仕組みだ。

減塩食の塩味は1.5倍に増強され、美味しく食べられるという。

楽しむために

味覚は生きるために必要な食べ物を検知するセンサーであり、

長い進化の過程で獲得された。

例えば人類の祖先は森で果物を食べ、それに含まれる糖を

エネルギー源として生きてきたので、我々は甘味を好ましい味

として感じるのだ。

うま味は体をつくるタンパク質、塩味は身体の維持に必要な塩分が

含まれていることを示す。

一方、苦味は毒物、酸味は腐敗のシグナルだ。

人間は、これらの5つの味覚によって、その食べ物を食べていいか

どうか判断してきた。

だが、今日、味覚は本来の役割を失いつつある。

現代人は食べ物の危険性を苦味や酸味で気付くことはまれで、

食品の成分表示や賞味期限などの情報で判断することが多い。

食の情報はネットにもあふれている。

味覚は飢餓と隣り合わせだったころは生存に必須だったが、

これからは料理と同じように趣味や娯楽の役割を担って

いくに違いない。

聴覚は本来、身の回りの危険を察知するためのものだが、

人間は音楽のためにたくさん使っている。

味覚も同じように、楽しむために使われていくだろう。

味覚や料理のデータを遠隔地に転送する技術を開発中である。

一流レストランの味をセンサーで測定し、データを家庭の

装置に送り、同じ味付けになるように必要な味の成分を自宅の

食材に吹き付け、プロの料理を再現する構想だ。

ラジオやテレビは、人類の文化や歴史に大きな影響を与えたが、

それと同じような第三者の波になり得る。

ネット配信で音楽や映像を楽しむように、味もダウンロードする

時代になる。

味の成分比率を音楽のシンセサイザーのように編集することも可能で、

未知の味わいを作り出せるかもしれない。

食がメディアに変容し、創造的な「作品」として配信されれば、レシピに

著作権を認めるべきだとの議論も本格化するであろう。 

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