生成AI・求められる教師力

生成AI

学校AI活用に年齢制限

文部科学省は、昨年に開かれた中央教育審議会の特別委員会の

会合で、「チャットGPT」など生成AI(人工知能)に関する教育

現場での活用ガイドライン(指針)に、年齢制限や個人情報の取り

扱いのあり方を示すと同時に、利用可能な場面や禁止すべき

場面を盛り込んだ。

 

文科省が特別委に示した資料では、教育現場でのAI活用について、

思考力や創造性の影響、個人情報漏洩・著作権保護といった

「リスクの整理が必要」と指摘。

 

一方、現行の学習指導要領では、学習の基盤となる資質・能力に

「情報活用能力」を位置づけている事から、AIを「どのように

使いこなすのかという視点や、自分の考えを形成するのに生かすと

いった視点も重要」と強調した。

その上で、ガイドラインには

①年齢制限、

②個人情報・著作権の扱い、

③利用可能な場面・禁止すべき場面、

④授業方法のアイデア

などの要素を盛り込んだ。

 

文科省は活用の具体的な場面として、生徒の学習レベルに合わせて

教材を提供したり、テストの答案の分析に役立てたりする義務を

想定。

年齢制限は、チャットGPTを提供する米オープンAIが、利用規約で

利用を、

「18歳以上、もしくは保護者の承認を得た13歳以上」

と定めていることなどを踏まえた。

文科省は、専門家や教育現場への意見聴取を進めて、政府の議論を

見据えながらガイドラインを取りまとめた。

急ぐ教育活用・戸惑いも?

文科省が公表したガイドライン(指針)は、生成AI(人工知能)の

教育活動に前向きな姿勢を示した。

文科省が指針策定のため専門家へのヒアリングに着手したのが

昨年の初夏の頃、そこから数カ月余りと異例のスピード公表に

至ったのは、すでに生成AIを用いる学校がある中、教師の対応力に

大きな開きがあり、急激な社会変化への対応が求められたからだ。

 

指針では高い教師力を求め、利用規約の順守も前提になるため

「すぐに幅広く使われる状況にはならないだろう」(文科省幹部)

との指摘もある。

 

情報通信技術(ICT)の積極活用で知られる東京の小学校では、

昨年に、道徳の授業で生成AIを取り入れた。

友達から郵便料金不足のはがきが届き、友達に不足を伝える

べきか悩むという話をもとに、自分の意見と生成AIの回答を

比べた。

また、茨城県つくば市では、市内の全小中・義務教育学校で

生成AIを順次授業で活用している。

小学5年から中学3年が対象で、市のモデル校の6年を対象に

した授業では、市の特徴など生成AIに質問し、その内容を

検討した。

 

市の担当者は「子どもがメリットもデメリットも理解した

上で、活用できそうなことを考える時間を確保したい」と

している。

AI導入の賛否

都内の私立高校で情報の授業を担当する50代の男性教師は、

子ども自身が想定した質問と回答を生成AIの回答と比べる

ことで、「理解を深めるきっかけになる」と見ている。

この男性教師は「インターネット同様、生成AIも手軽に使える

環境になった以上、子どもの日常と切り離すことはできない」

と話す。

 

一方、都内の公立小学校に勤務する女性教師は、「活用の話が

にわかに取り上げられた印象があるため、戸惑っているのが

多くの教師の本音ではないか」と指摘。

「生成AIがなくても十分な指導ができているので、事業研究の

知見が集まった段階で、指導上の効果を見極めて使うかどうかを

判断したい」と慎重だ。

AIの教育活用

文科省の担当者は「指針に沿った授業ができる教師はごく一部」

との認識を示す。

利用規約などを順守すれば、年齢制限や保護者の同意(チャット

GPTなら利用は13歳以上、18歳未満は保護者の同意が必要)と

いったハードルがあるため、教育活動は当面、かなり限定される

可能性が高い。

ただ、東京大が「可能性を積極的に探る」との方針を示すなど、

大学の授業や研究で生成AIが浸透しつつある。

 

大学や社会に出たときのスムーズな対応を考えれば、小中高校生が

段階的に生成AIの基本的な知識や活用法を身につけることは必要

不可欠となる。

 

指針は順次、改定する方針としているなど、スピード感を優先した

結果、準備不足は否めない。

生成AIの教育活動をめぐる環境整備が急がれる中、文科省は、教師

向けの研修や保護者向けの啓発資料などを作成し、全国の教育委員会

などと共有する方針である。

教師の学ぶ機会確保・課題

ガイドラインは、全体的に踏み込んだ内容であった。

長所や短所を指摘した上で、AIの前向きな活用に舵を

切っている。

チャットGPTが世界に出て、数年も経過していない中で

ガイドラインを出したことは異例である。

活用する場合に教師が気をつけなければならない点を指摘

した上で、積極的に教育に導入しようと事例を挙げている。

例えば、英会話の相手としての活用や自然な英語表現を学ぶ

手段として例示するなど、現場の参考になる事例が多く

含まれている。

さらに、子どもがAIを活用して自ら学ぶ提案がなされている

のも大きな特徴である。

ところが、AIの特性などに関して、各教師が説明することが

バラバラでは、子どもたちが混乱してしまうので、教育委員

会や学校単位で早期に教師向けのガイダンスを行う必要があり、

教師がAIを学ぶ機会をどう確保するかが課題となる。

 

世界では、ICTを活用した授業の先進例がいくつもあるので、

アナログ時代と比べて違う次元の教育が可能になってくる。

AI導入で教育の質が開かないよう、国や教育委員会は、

優れた事例を情報提供するなどのサポートを行うべきだ。

教育での活用には保護者の理解が必須で、保護者にもAIを

学ぶ姿勢が求められている。

生成AIを活用し、実際に行われた授業実践例

①親戚から贈答品目不足の荷物が届き、不足を伝えるべきか

 悩むという話をもとに、自分の考えと生成AIの回答を比べる。

②住んでいる自治体の特徴などを質問し、回答を検討して生成

 AIの特徴をつかむ。

③入力したプログラムで発生したエラーを生成AIが指摘、提供

 されたヒントから生徒がプログラムの改善を考える。

 ④グループで考えた題名、登場人物の名前、背景などから生成

  AIで脚本を作り、その後修正、実演してみる。 

 

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